「お店の客席を少し広げて、個室も一つ作りたいのですが、何か手続きは要りますか」
熊本で接待のあるお店を営む方から、改装を考えたときによくいただくご質問です。風俗営業の許可は、申請のときの図面どおりの造りに対して出ています。許可のあとに造りを変えると、内容によって工事の前に承認を受けるものと、変えたあとに届け出るものに分かれます。
結論から書きます。客室の位置・数・広さを変える工事や、壁・ふすまなど、お店の中を仕切る設備を変える工事は、あらかじめ公安委員会の承認を受けてから行います。 照明・音響・防音の設備の変更や、小規模な修繕・模様替えは、変えたあとに届け出ます。承認を受けずに造りを変えると、1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金(または両方)の対象です。
この記事では、承認が要る変更と届出で済む変更の分かれ目、期限、深夜にお酒を出すお店(接待なし)の変更の届出、お店の名前や管理者が変わったときの手続きを説明します。
この記事のポイント
- 風俗営業のお店は、増築・改築などで造りや設備を変えるとき、あらかじめ公安委員会の承認を受けます(風営法第9条第1項)
- 承認が要るのは、大規模の修繕・模様替え、客室の位置・数・床面積の変更、壁・ふすまなど仕切りの変更、営業の種類を変えることに伴う変更です
- 照明・音響・防音の設備の変更や、小規模の修繕・模様替えは、変えたあとに届け出ます(照明・音響・防音は10日以内、それ以外は1か月以内)
- 承認を受けずに造りを変えると、1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金(または両方)の対象です
- 深夜にお酒を出すお店(接待なし)は承認の手続きはありませんが、客室・仕切り・照明・音響などを変えたら10日以内に届け出ます
先に承認が要る変更

風俗営業者は、増築・改築その他の行為で営業所の構造や設備を変えようとするときは、あらかじめ公安委員会の承認を受けなければなりません(第9条第1項)。ただし、内閣府令で定める「軽微な変更」は除かれます。
内閣府令は、次の変更を「軽微な変更」に当たらないものとしています(許可申請書の添付書類等に関する内閣府令 第2条)。つまり、次の変更は承認が要ります。
- 建築基準法の大規模の修繕・大規模の模様替えに当たる変更
- 客室の位置・数・床面積の変更
- 壁・ふすまなど、営業所の内部を仕切るための設備の変更
- 営業の方法の変更に伴う構造や設備の変更
「営業の方法の変更」について、警察庁の解釈運用基準は、和風の料理店を洋風のお店に変えるように、許可証に書かれた営業の種類が変わるような変更を挙げています。
承認の申請には、変更承認申請書(施行規則 別記様式第10号)に、営業の方法を記載した書類・営業所の使用の権原を示す書類・平面図などのうち、変更に関係するものを付けます(施行規則第19条)。公安委員会は、変更後の造りが構造・設備の技術上の基準と許可の条件に合っていれば承認します(第9条第2項)。熊本県の手数料は9,900円です(熊本県手数料条例)。
たとえば、壁を動かして客室を広げる、壁で仕切って個室を作る、といった工事は、この承認の対象です。個室を作ると客室の数が増えるので、個室も、残りの客室も、それぞれ1室16.5平方メートル以上(和風の客室は9.5平方メートル以上)あるかを確かめます(施行規則第7条)。
なお、客室の中に、ついたて・カーテンや背の高い椅子(高さがおおむね1メートル以上のもの)などを置いて席を区切ることは、見通しの基準(施行規則第7条)に合わないため、承認を受けてもできません(解釈運用基準 第12の8(1))。熊本県警も「1メートルを超えるついたて及び椅子など」は客室の内部に設けられないとしています。
変えたあとに届け出る変更

承認の要らない軽微な変更をしたときは、変えたあとに届出書を出します(第9条第3項第2号)。解釈運用基準は、届出の要る変更として次の例を挙げています。
- 営業所の小規模の修繕・模様替え
- 食器棚などの家具の設置・入替え(作り付けのものを除く)
- 照明設備・音響設備・防音設備の変更
届出の期限は、変更した日から1か月以内です。ただし、照明・音響・防音の設備の変更は10日以内です(施行規則第20条第2項)。
届出も要らない変更
解釈運用基準は、次の変更は届出も要らないとしています。
- 小さな破損箇所を元どおりに直すこと
- 照明・音響などの設備を、同じ規格と性能の範囲で新しくすること
- 営業所内の見通しを妨げない程度の、椅子・テーブルなどの軽い配置換え
たとえば、切れた照明を同じ明るさのものに取り替えるだけなら、届出は要りません。照明の種類や明るさが変わる入替えは、照明設備の変更として10日以内に届け出ます。
承認を受けずに変えたとき

承認を受けないで営業所の構造や設備を変えると、1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、またはその両方の対象です(第51条第1号)。届出が要る変更を届け出なかったときは、30万円以下の罰金の対象です(第56条第3号)。
熊本県警は、許可のときは「従業員控え室」として客室から外していた部屋を、あとで客室として使った例を挙げています。客室の広さの基準を満たさない部屋でした。熊本県警は、これを構造・設備の維持の義務の違反ではなく「無承認変更違反」とし、刑事処分のほか、許可の取消処分の対象になるとしています。
図面に書いた部屋の使い方を変えるときも、造りの変更として承認が要ることがあります。許可のときの図面と、いまのお店の使い方が合っているかを、改装の前に見直すことが大切です。
お店の名前・管理者・役員が変わったとき

造りの変更のほかに、次のことが変わったときも届け出ます(第9条第3項第1号)。
- 許可を受けた人の氏名・名称・住所、法人の代表者の氏名
- 営業所の名称(お店の名前)
- 管理者の氏名・住所
- 法人の役員の氏名・住所
期限は、変わった日から10日以内です。ただし、法人の名称・住所・代表者の氏名、役員の氏名・住所の変更は20日以内です(施行規則第20条第2項)。許可証に書かれている事項が変わったときは、許可証の書換えも受けます(第9条第4項。熊本県の手数料は1,500円)。
管理者が辞めたときは、その日から14日間は管理者がいなくてもよいとされていますが、その間に新しい管理者を選びます(第24条第1項)。
なお、営業所の場所が変わる(お店を移転する)ことは、この届出の対象に入っていません。 風俗営業の許可は営業所ごとに受けるものなので(第3条第1項)、移転先で新しく許可を受けます。
深夜にお酒を出すお店(接待なし)の変更
深夜酒類提供飲食店営業の届出をしたお店には、承認の手続きはありません。そのかわり、次のことが変わったら、変わった日から10日以内(法人の名称・住所・代表者の氏名の変更は20日以内)に届け出ます(第33条第2項、施行規則第104条)。
- 届出をした人の氏名・名称・住所、法人の代表者の氏名
- 営業所の名称
- 営業所の造りや設備のうち、次の変更(内閣府令 第22条):大規模の修繕・模様替え、客室の位置・数・床面積、壁・ふすまなど仕切りの設備、照明設備、音響設備・防音設備
解釈運用基準は、ここでいう仕切りの設備には、壁やふすまのほかカーテンやついたても含まれるとしています。同じ性能の電球への取替えや、音に影響のない同じ性能の機器の入替えは、変更に当たりません。
届け出たあとも、客室の広さ・見通し・明るさ(20ルクス以下にしない)などの基準は保ち続けます(第32条第1項)。深夜酒類提供飲食店営業の基準は、「熊本で0時以降もお酒を出すお店に深夜酒類の届出は要る?主食を出す居酒屋は要らない場合も」で説明しています。
よくある質問
昼と夜で客席の配置を変える、深夜にお酒を出すお店は、どうなりますか
客室の範囲(届け出た図面の客室の位置・広さ)は変えずに、椅子やテーブルを動かすだけなら、内閣府令が届出の要る変更として挙げているもの(第22条)に入らないので、変更の届出は要りません。夜だけ客室でない部分に席を広げるなら、客室の位置・床面積の変更として届出が要ります。カーテンやついたてで席を区切るのは仕切りの設備の変更に当たりますが(解釈運用基準 第29の2(1))、客室の内部に見通しを妨げる設備(ついたてや、高さがおおむね1メートル以上の椅子など)は置けないので(施行規則第99条)、区切る方法から図面で確かめます。当法人では、昼と夜で使い方が変わるお店は、夜の営業の形で基準に合っているかを図面で確かめてから届け出ます。
壁紙やソファーを新しくするだけでも、手続きは要りますか
風俗営業のお店では、作り付けでない家具(ソファーなど)の設置・入替えは、変えたあと1か月以内の届出の対象です。壁紙の張替えも、当法人では小規模の模様替えとして、1か月以内の届出の対象になると考えています。破損箇所を元どおりに直すだけなら届出は要りません。深夜にお酒を出すお店(接待なし)では、壁紙やソファーの入替えだけなら届出は要りません(内閣府令 第22条)。当法人では、工事の内容を伺って、どちらに当たるかを整理します。
承認を待たずに工事を始めてもよいですか
承認は「あらかじめ」受けるものなので(第9条第1項)、承認を受けてから工事を始めます。工事の日程は、承認の申請と合わせて組みます。客室の広さや見通しが基準に合うかは、申請の前に図面の段階で確かめておきます。
改装と一緒に、お店の名前も変えます
お店の名前の変更は、変わった日から10日以内の届出と、許可証の書換えです。造りの変更(承認が要るものは工事の前の承認申請)とは別の手続きになるので、それぞれの時期に合わせて出します。
出典・参考
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索)…第3条・第5条・第9条・第24条・第32条・第33条・第51条・第56条
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)…第7条・第19条・第20条・第42条・第99条・第104条
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令(e-Gov法令検索)…第2条・第22条
- 熊本県手数料条例(熊本県例規集)…第2条第1項第51号・第52号
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準(令和8年7月1日)(警察庁)…第12の8(1)「見通しを妨げる設備」・第17の1「営業所の構造及び設備の変更」・第29の2「構造又は設備の変更の届出」
- 熊本県警のページ「風俗営業(第1号営業)の許可申請及び深夜酒類飲食店営業開始届出の記載例の掲載」(熊本県警察)…生活環境課ニュース「許可申請等で散見される違反」
まとめ
- 客室の位置・数・広さ、壁・ふすまなどの仕切りを変える工事は、あらかじめ承認を受けます
- 照明・音響・防音の設備の変更は10日以内、小規模の修繕・模様替えなどは1か月以内に届け出ます
- 承認を受けずに変えると、1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金の対象です
- お店の名前・管理者・役員などの変更は10日以内(法人の名称・代表者・役員は20日以内)に届け出ます。移転は新しい許可です
- 深夜にお酒を出すお店は、客室・仕切り・照明・音響などを変えたら10日以内に届け出ます
改装・変更の手続きは、当法人にご相談ください
ノーサイド行政書士法人は、熊本で風俗営業の許可・深夜酒類提供飲食店営業の届出を支援している行政書士法人です。
- 改装の計画を伺い、承認が要るか届出で済むかを整理します
- 変更後の図面を作り、客室の広さや見通しが基準に合うかを工事の前に確かめます
- お店の名前・管理者・役員の変更の届出と、許可証の書換えもお手伝いします


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