「いまは個人でお店を出そうとしていますが、近いうちに会社にするつもりです。個人で取った許可は、会社にしてもそのまま使えますか」
風俗営業の許可を取ろうとしている方や、すでに個人で営業している方からいただくご質問です。
結論から書きます。個人で受けた風俗営業の許可は、会社を作って法人にしても引き継げません。法人で新しく許可を受け直します。 風営法が許可の引き継ぎを認めているのは、相続・法人の合併・法人の分割の3つだけで、個人から法人への切り替え(いわゆる法人成り)は入っていないからです。
この記事では、許可を引き継げる場合と引き継げない場合、保健所の飲食店営業許可と深夜酒類提供飲食店営業の届出の扱い、法人化を考えている方がどの順番で進めるとよいかを説明します。
この記事のポイント
- 風俗営業の許可を引き継げるのは、相続・法人の合併・法人の分割の3つだけです
- 個人から法人への切り替えは入っていないので、法人で新規の許可を受け、個人の許可は返納します
- 保健所の飲食店営業許可は、食品衛生法で営業の譲渡による承継ができ、熊本市では法人成りは承継届の手続きです
- 深夜酒類提供飲食店営業は、法人が新しく届出を出し、個人は廃止の届出を出します
- すぐに法人化する予定なら、先に法人を作ってから風俗営業の許可を申請するほうが、手間も費用も少なく済みます
風俗営業の許可を引き継げるのは3つの場合だけ

風俗営業の許可は、許可を受けた人(個人か法人)ごとの許可です。風営法は、許可を受けた人とは別の人が営業を引き継ぐ場合として、次の3つだけを定めています。
| 場合 | 手続き | 時期 |
|---|---|---|
| 相続 | 相続人が公安委員会の承認を受ける(第7条) | 被相続人の死亡後60日以内に申請 |
| 法人の合併 | 合併について公安委員会の承認を受ける(第7条の2) | 合併の前に、あらかじめ |
| 法人の分割 | 分割について公安委員会の承認を受ける(第7条の3) | 分割の前に、あらかじめ |
承認を受けると、相続人や合併後の法人などが、風俗営業者の地位を引き継ぎます。熊本県公安委員会の審査基準では、承認の標準処理期間を、相続は30日、合併と分割は35日としています。
個人の方が会社を作って、そこへお店を移す場合は、この3つのどれにも当たりません。相続・合併・分割以外の方法で営業する人が変わるときは、新しく営業する人が、新規の許可を受けます。 お店ごと別の人に売り渡す(営業の譲渡)場合も同じです。
法人にするなら、法人で新規の許可を受ける

個人から法人に切り替えるときは、法人が申請者になって、風俗営業の許可を新しく申請します。新規なので、許可までの期間の目安(熊本県公安委員会は55日としています)がもう一度かかり、営業所の実地調査も受けます。
法人で申請するときは、定款・登記事項証明書、法人の誓約書、株式会社なら株主名簿の写し、役員全員の住民票の写しと市町村長の証明書などを付けます(添付書類内閣府令第1条第7号)。個人のときよりも書類は増えます。
個人の許可は、風俗営業を廃止したときに、許可証を公安委員会に返納します(風営法第10条第1項第1号)。返納すると、許可は効力を失います(同条第2項)。法人の許可が出る前に個人の許可を返納すると、その間は接待のある営業ができません。個人の廃止の日と法人の許可の日がずれないように、日程を組むことが大切です。
保健所の飲食店営業許可は、承継の届出で引き継げる

風俗営業の許可と違って、食品衛生法の飲食店営業許可は、営業の譲渡でも引き継げます。食品衛生法第56条は、許可を受けた人が営業を譲渡したとき、譲り受けた人が許可営業者の地位を承継するとしています。承継した人は、遅滞なく、その事実を示す書面を付けて届け出ます。
熊本市の案内でも、個人事業主が法人に成り代わる(法人成り)場合は、承継届(譲渡)の手続きが必要とされています。保健所の許可は新しく取り直さなくても、届出で済みます。
同じお店の手続きでも、保健所は「承継」、警察は「新規」になるので、取り違えないように注意が必要です。
深夜酒類提供飲食店営業は、法人が新しく届け出る

0時以降もお酒を出すお店の、深夜酒類提供飲食店営業の届出も、届け出た人ごとのものです。風営法第33条第1項は、深夜に営業を「営もうとする者」が届出書を出すとしているので、法人で営業するなら、法人が新しく届出書を出します。届出は、深夜に営業を始めようとする日の10日前までです(風営法施行規則第103条第3項)。
個人の側は、営業をやめたときに、廃止の届出書を出します(風営法第33条第2項)。
すぐ法人化するなら、先に法人を作ってから申請する

開業してすぐに法人にする予定があるなら、先に法人を作り、法人で風俗営業の許可を申請するほうが進めやすくなります。個人で許可を取ってから法人にすると、次のことが二重になるからです。
- 風俗営業の許可の申請(申請手数料・図面・添付書類・実地調査)
- 許可までの期間の待ち時間
- 深夜酒類提供飲食店営業の届出
法人を作るのに必要な期間は、定款の作成や登記の準備で変わります。開業日から逆算して、法人の設立と許可の申請のどちらを先に進めるかを決めます。法人で申請するときの添付書類(株主名簿や、親会社・子会社などを書いた書面)は、「熊本で法人の風営法申請に株主名簿は要る?親会社まで見られる令和7年改正」で詳しく説明しています。
よくある質問

お店の名前も場所も変えずに法人にするだけでも、取り直しですか
取り直しです。許可は営業する人ごとのもので、お店の名前や場所が同じでも、個人と法人は別の人です。相続・合併・分割のどれにも当たらないので、法人で新規の許可を受けます。
個人で営業している人が亡くなったときは、どうなりますか
相続人が営業を続けるなら、被相続人が亡くなってから60日以内に公安委員会に申請して、承認を受けます(風営法第7条第1項)。申請していれば、承認を受けるか、承認しない旨の通知を受けるまでは、被相続人の許可が相続人の許可とみなされます(同条第2項)。
法人の代表者や役員が変わっただけでも、取り直しですか
取り直しではありません。許可を受けているのは法人なので、代表者や役員が変わっても、許可はそのままです。そのかわり、役員などに変更があったときは、公安委員会に届出書を出します(風営法第9条第3項)。
会社を合併するときは、合併してから手続きすればよいですか
合併の前に、あらかじめ承認を受けます。警察庁の解釈運用基準は、承認の前に合併の効力が生じると、もとの許可はその時点で効力を失い、承認ができなくなるとしています。合併の日程を決める段階で、承認の申請の時期も決めます。
出典・参考
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索)…第3条・第7条・第7条の2・第7条の3・第9条・第10条・第33条
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)…第103条
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令(e-Gov法令検索)…第1条
- 食品衛生法(e-Gov法令検索)…第56条
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準(令和8年7月1日)(警察庁)…第13〜第15(相続・合併・分割)
- 熊本県公安委員会 審査基準(風俗営業の許可・令和7年11月28日作成)(熊本県)
- 熊本県公安委員会 審査基準(風俗営業の相続の承認)/(合併の承認)/(分割の承認)(熊本県)
- 食品関係営業許可に係るよくある質問について(熊本市)…法人成りの承継届
まとめ
- 風俗営業の許可を引き継げるのは、相続・法人の合併・法人の分割の3つだけです
- 個人から法人に切り替えるときは、法人で新規の許可を受け、個人の許可証は返納します
- 保健所の飲食店営業許可は、譲渡による承継の届出で引き継げます
- 深夜酒類提供飲食店営業は、法人が新しく届出を出し、個人は廃止の届出を出します
- すぐ法人化する予定なら、先に法人を作ってから申請すると、手続きが二重になりません
風俗営業の許可の切り替えは、当法人にご相談ください
ノーサイド行政書士法人は、熊本で風俗営業の許可・深夜酒類提供飲食店営業の届出を支援している行政書士法人です。
- 法人化の予定と開業日を伺い、個人と法人のどちらで申請するかを一緒に決めます
- 個人から法人に切り替えるときは、営業の切れ目が出ないように、廃止と新規の日程を組みます
- 保健所・警察それぞれの手続きを、まとめて進めます



コメント